思想界全体の物質への注目を導いた、ニュー・マテリアリズムの金字塔的大著。
本書で提案されるのは、この宇宙のあらゆる物質をはじめ、空間、時間までもあらかじめ確定したものとして存在しているのではなく、関係する諸部分のもつれと内部作用から創発するという、新たな認識論、存在論といえる「エージェンシャル・リアリズム」である。ボーアの量子力学に深く立ち入り、バトラーのフェミニズム理論を批判的に検討することで、言葉と物質、人間と非人間の関係を独自のポストヒューマニズム的視点から捉え直し、哲学、科学論にとどまらず社会理論にも重要な示唆をもたらす。21世紀の思想にその名を刻む革命的著作。
「物質と意味は独立した二つの要素ではない。両者は分かちがたく融合しており、どれほどのエネルギーを持つ出来事をもってしても切り離すことはできない。「分割することができない」「切り離すことができない」という意味のギリシャ語アトモスに由来するアトム、つまり原子でさえも分割することができる。しかし、物質と意味は、化学変化や遠心分離器、核爆発をもってしても分離できない。問題=物質(マター)になるとは物質と意味に同時に関わることであり、おそらくこのことが明白になるのは、問題=物質(マター)の性質が問われているとき、つまり、問題=物質(マター)の極小の一片であっても根深い固定観念や大都市を爆破してしまうほどの力があると明らかになるときだろう。だからこそ、現代物理学がつきつけるさまざまな問題=物質の不可避なもつれ――在ることと知ることと行うことの、存在論と認識論と倫理の、事実と価値のもつれ――は否定しようもなく、非常に重要な意味をもつのだ。」(本書より)
◎目次(抄)
第一部 もつれあった始まり
序章 問題=物質(マター)になることの科学と倫理
第一章 宇宙の途上で出会う
第二章 回折――問題=物質(マター)になる差異、偶発性、もつれ
第二部 内部作用の重要性
第三章 ニールス・ボーアの哲学‐物理学――量子物理学からみた知識と実在の性質
第四章 エ ージェンシャル・リアリズム――物質‐言説的実践はいかにして問題=物質になるか
第三部 もつれと再構成/再定義
第五章 現実(リアル)になること――テクノサイエンス実践と現実(リアリティ)の物質化
第六章 時空の再構成/再定義――自然文化の力、権力の変わりゆくトポロジー
第七章 量子もつれ――実験形而上学と自然の性質
第八章 知ることの存在論、生成の内部作用、問題=物質(マター)になることの倫理
付録A 「カスケード実験
よく利用するジャンルを設定できます。
「+」ボタンからジャンル(検索条件)を絞って検索してください。
表示の並び替えができます。