中国戦時秩序の生成

中国戦時秩序の生成

出版社よりお取り寄せ(通常3日~20日で出荷)
※20日以内での商品確保が難しい場合、キャンセルさせて頂きます

出版社
汲古書院
著者名
笹川裕史
価格
13,200円(本体12,000円+税)
発行年月
2023年11月
判型
A5
ISBN
9784762967320

【序章より】(抜粋)
 本書のタイトルにもなっている「戦時秩序」という概念について簡単に言及しておこう。通常、近代国家において本格的な戦争が勃発すると、戦争遂行に必要な物的人的資源を大量かつ効率よく動員するために、社会経済や国民生活に対する管理・統制の強化が要請される。この要請をうけて、まず国家機構や法制度の再編成が上から断行され、平時の体制から戦時体制への移行が開始される。
 しかし、ここで留意すべき点は、こうして上から構築された戦時体制が国家のねらいどおりに機能するかどうかは、けっして自明ではないということである。本書では、戦時体制に生命を与え、これを下から支える固有の社会秩序を、さしあたり戦時秩序と呼ぶことにする。その戦時秩序の生成は、戦時体制の構築に促され、これとパラレルに同時進行することもあるが、多くの場合、相互に齟齬が生じることもまた珍しくはない。たとえば、本書で具体的に描き出すように、社会が戦時体制を受け付けず、その期待された機能を著しく損なってしまう場合も普通に観察されるのである。
 他方、戦時体制が解除されれば、戦時秩序もまた、それと同時にあたかも何もなかったかのように雲 散霧消するわけではない。その含意についても注意を促しておきたい。長期にわたる戦争や国際緊張の もとで社会に根付いた戦時秩序は、客観情勢が大きく変化しても、人々の日常の行動様式や意識構造に 深く根を下ろして、その後も長く居座り続けることもある。甚だしい場合には、いわば負の遺産として、 戦後における国家や社会がとりえる選択肢の幅を著しく狭め、そこに不穏な歪(ひず)みや新たな惨劇を引き寄せてしまう可能性も皆無ではない。(中略)そして、今日の中国が抱える根深く深刻な諸問題の背後にも、複合的な要因がさまざまに絡んでいるにせよ、苛酷な総力戦にさらされ続けたなかでその身に背負うことになった負の遺産が影を落としていると考えている。この点も、本書に盛り込んだ主要な問題意識にほかならない。

お気に入りカテゴリ

よく利用するジャンルを設定できます。

≫ 設定

カテゴリ

「+」ボタンからジャンル(検索条件)を絞って検索してください。
表示の並び替えができます。

page top