周其仁氏は、中国の市場化改革路線を理論的に主導してきた高名な経済学者であるが、日本ではあまり知られていない。ロナルド・コースが嚆矢となった新制度派経済学に強い影響を受ける一方、地に足の着いた議論に大きな魅力がある。
本書は彼の代表的な論文の集成で、初の邦訳刊行である。
中国が劇的な経済成長を果たしたことに際し、農地や企業の所有権のあり方が変わることで、どのように経済は活性化したのか、人的資本理論も駆使し読み解き、そのダイナミズムを描き出す。
特に、第3章から第5章までで論じられる農村改革は、本書の白眉の一つである。かつて人民公社などの制度の下で営まれ、十分な生産を行うことができなかった集団農業が、農家ごとの請負生産に変革されていく過程が、農民からのボトムアップによる行動を起点とし、各レベルの政府や行政の間でなされた大量で複雑なインタラクションを経て実現したことなどが、精緻に読み応えある形で記述されている。
さらに、中国の医療における「医者に診てもらうのが難しい上、医療費が高い」という課題や、高度成長が終焉を迎える中、今後の中国の発展はどのように実現したらよいのかなど、さらなる改革のための提言も行う。
中国経済を中心に幅広く発信を行う梶谷懐氏(神戸大学大学院教授)を監訳に迎え、『現代経済学』(中公新書)等の著作を持つ瀧澤弘和氏(中央大学教授)も推薦する貴重な文献!
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