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〈構造主義の「結晶化」を駆動しているのは、二人の思想家の接近というよりも、むしろ反発とも呼べるほどの距離感、ヤーコブソンも認めるレヴィ=ストロースの類稀なる「距離についての深い直観」だったのではないだろうか〉(訳者あとがき)。
構造言語学のロマーン・ヤーコブソンと構造人類学のクロード・レヴィ=ストロース。20世紀思想史に聳え立つ二人が生涯の友情に結ばれ、両者の出会いこそが時代を画す構造主義の大潮流を生み出したことは、当時から広く知られてきたが、本書はこれまで未公刊の書簡群を編み、まさしく構造主義が生成するその現場を照らし出す。
有名な唯一の共著論文「ボードレールの「猫たち」」成立過程を仔細に明かすやり取りをはじめ、古スラヴ語の親族名称をめぐる応酬、ロシア語の音韻論的システムの考察。大洋を挟んで草稿を送り合い、人間諸科学の数学化に期待し、学界内の攻撃には共同戦線を張る。実り豊かな交感と、そしてまた、実現しなかったいくつものプロジェクト。〈恐るべき学識と関心の幅広さ、奥深さに打ちのめされない者はいないだろう。しかしながら、それ以上に私たちを深く揺さぶるのは、彼らの交流が、彼らが生きた時間の中で、「人間と作品の間の心揺さぶる親近性」を示しつつ、職業上の不安、不安定な国際情勢、打ち捨てられた計画、物理的あるいは心理的な行き違い、健康上の不調、友人の死など、無数の断絶(あるいはその予感)を経ながら、ついに二つの偉大な記念碑を打ち立て、構造主義という一本のラインへと結実していくその確かな足取りである〉(同上)。編者の詳密な注と序文、関連テクスト精選8点をも収める。
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