取り寄せ不可
煙突のすすのようなモノクロの世界に、
伯爵との出逢いが色彩をもたらした。
漆黒の髪、黒の上着とスカートに、黒いブーツ。
煙突掃除人の娘ジェマイマは伝統的な盛装で、貴族の結婚式の余興に出た。
上流階級の人々に気後れしていたところ、一人の男性が声をかけてきた。
見目麗しきその男性は、第15代セルボーン伯爵ロブ。
結婚式に煙突掃除人とキスをすると幸せになれる――
そんな言い伝えに則って彼に口づけされ、ジェマイマの胸はときめいた。
一方ロブは、亡き父と祖母の奇妙な遺言に頭を痛めていた。
伯爵領と莫大な資産を継ぐ条件として、父からは4週間以内の結婚を、
祖母からは100日間の禁欲を命じられたが、適した相手がいないのだ。
いや、待てよ。この煙突掃除人の娘を、名ばかりの妻にしたら……?
透き通る白い肌と青紫の輝く瞳、そして教養と機知に富んだジェマイマこそ、完璧な伯爵夫人候補だ――煙突掃除人の娘でさえなければ。迷うロブでしたが、出逢った数日後に彼女の家を訪れ、便宜結婚を申し込みます。「結婚しても君は君、僕は僕で暮らそう」と。
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