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私が初めて小川忠太郎先生の世田谷のご自宅を訪問したのは昭和六十二年七月のある暑い日であった。
当時、剣道は、理念にうたわれている「人間形成の道」という観念が薄れ、勝負本位の当てっこ剣道が横行していた。このままいったら剣道は違ったものになってしまう。何とかこうした風潮をくい止めることはできないものか。それには『剣道時代』の誌上で、しつかりした理論に裏打ちされた記事を掲載し、警鐘を鳴らす以外にない。そう考えたとき、真っ先に頭に浮かんだのが剣道界の最高権威で剣禅悟達の小川先生であった。そこで早速、先生に趣旨をお話しし協力をお願いすると、剣道界のためになることなら喜んでお手伝いしましょうとの有難いご返事をいただいたのである。(後略)
(「あとがき」より)
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