21世紀に入ってからの約20年間余は、越境協働によるイノベーションの時代であったとも言える。この間のイノベーション研究は、それまで企業内部や国境内部で完結していたものが境界の外部に拡張し、「企業や国の境界を越えて協働する」ということを主要なトピックとしてきた。このような越境協働研究の隆盛にもかかわらず、イノベーションや新規事業の創造にとって、境界があることや、境界を越えることの意味について、包括的に議論した研究は、それほど多くはない。
本書は、「企業の境界」や「国境」の概念を整理した上で、企業活動の「越境」から創出されるイノベーションのプロセスについて多角的に議論した貴重な研究成果である。同時に、筆頭編著者の椙山氏の門下生はじめ、共同研究者など、第一線の研究者23名が集結し、椙山氏の京都大学退職記念出版として企画された本書は、単なる記念本として書棚に飾られるのではなく、研究書として活用される価値ある書籍にすることを目指している。
巻末の終章では、椙山氏を含む編著者4名が、経営学の研究観について自由に語り合う座談会を収録した。本書を手に取る研究者にとって、研究のスタンスを考える一助となるであろう。
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