魂の物差し 1998~2022

魂の物差し 1998~2022

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出版社
ふらんす堂
著者名
橋本和彦
価格
2,750円(本体2,500円+税)
発行年月
2023年9月
判型
A5
ISBN
9784781415901

◆第三詩集



棒は原初的な道具である

恐らくは、われわれの祖先が

敵や獲物を打ち据えるために

木の枝か何かを手にしたことが

棒という道具の始まりだろう



棒はその単純さゆえに多用され

打ったり叩いたりする以外にも

手の届かない場所を探ったり

傾く何かの支えとして

絶えず暮らしの場に置かれてきた



しかし棒は突然、見るも無残なさまで

バギリと折れてしまうことがある



この世界はある瞬間

非常にバランスを欠くことがあって

一時的に膨大な負荷が

一本の棒にかかってしまうのだ



また、見た目には堅固であっても

棒にはその実、愚直で脆い側面がある



ここにある一本の棒

それは私たちの祖先が手にしたままの姿で

確かに今も存在している



しかし、棒はもはや

日々組み替えられていく世界の中で

その居場所を失いかけている



棒に触れると

遠い岸辺にある小石のように

冷たい



(――「棒」より)

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