「原爆の的確な記録であるばかりでなく、ファンタスティクな魅力をそなえたこの小さな絵本」―大江健三郎(『ヒロシマ・ノート』エピローグより)
1950年、朝鮮戦争勃発後まもない夏、<原爆の図>制作中の丸木夫妻によって編まれた小さな絵本が、研究者の解説冊子とともに当時の姿でよみがえる。
本書は、「原爆の図」の共同制作で知られる画家の丸木位里と赤松俊子(丸木俊)が絵と文を手がけた絵本『ピカドン』(平和を守る会編、ポツダム書店刊)を、一九五〇年の発表時の状態を可能な限り再現して復刻し、あわせて別冊として研究者の解説をまとめたものである。
『ピカドン』は、連合国軍の占領下で原爆報道を禁じるプレスコード(検閲)があり、加えて六月に朝鮮戦争がはじまって反戦運動への圧力も強まるさなかに刊行された。広島に原爆が落とされた当日に各地で起きたできごとの記憶を、ペン画の明瞭な描線と簡潔な語り口によって多角的に伝えるこの絵本は、これまでにも複数の出版社から装いを変えてたびたび刊行されてきた。しかし意外なことに、一九五〇年当時のまま、掌に収まる軽やかな造本を再現する機会は、今回が初めてである。
よく利用するジャンルを設定できます。
「+」ボタンからジャンル(検索条件)を絞って検索してください。
表示の並び替えができます。