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言語の不可能性を乗り越え、自由の思想を追究した井筒俊彦。
自己と他者、自文化と異文化の「世界観」を架橋するために、「対話の哲学」を築いた軌跡を辿る。
井筒俊彦は英文による最初の著作『言語と呪術』(1956年)で言語思想を彫琢し、それをその後の著述活動では、一貫して「自由」を求める思想として発展していった。井筒は、詩的直観を哲学の言葉で再現し、言語の限界を切り開き、囚われなき自在な心を求める。それを理解する手掛かりとなるのが、『言語と呪術』である(本書第一章)。
『言語と呪術』の執筆以降、井筒は、「世界の経験」をあるがままに言語で表現しようとする思想を、古代の詩歌やクルアーン、東洋の古典思想に見出し、それらが提示する「世界観」を類型化し、対話させることを目指した。この「東洋思想の共時的構造化」の軌跡を、『言語と呪術』『スーフィズムと老荘思想』『意識と本質』等の代表作を読み解くことで辿り、その一貫した追究において、井筒が、「言語とアイデンティティ」「文化の均一化」という同時代の問題に対して、相対主義と本質主義を超克する〈自由なる思考〉を紡いだことを明らかにする。
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