統計入門

（「はじめに」より）
　高度情報化社会といわれて久しいものの，情報を受け取る側はそれほど変わったわけではありませんし，現実の世界は不規則で偶発的な変動にさらされています．これらの偶然を乗り越え，意味のある情報を導き出すには，どのような方法をとればよいかを統計学は教えてくれます．また，どの程度の信頼性があるかも統計学は教えてくれます．開票率0% で当選確実が出るのも，降水確率が当たるのも，背後に統計学があるからです．
　変化の激しいグローバル社会で勝ち抜くためには，統計学的発想は必要不可欠となっています．データサイエンスが重宝されるのも，こうした社会に対応するためでしょう．日々生み出されるデータから意味のある情報を引き出すために，統計学は有用な手法を提供してくれます．これらを有効に活用し，よりよい未来に活かしていく必要があります．
　本書は確率・統計を学ぶ人のための入門書，および演習書であり，高等学校初学年の確率，データ分析よりも深く学修します．前半は確率論の基礎を，後半では統計の基本的な理論ならびに手法などを扱っています．
　本書を読むにあたっては，多くは高等学校程度，一部は大学教養程度の微積分の知識があれば十分であり，確率や統計に関する予備知識はほとんど必要としません．
　本書で扱っている内容は確率・統計の基本的なものであり，必要な概念はその都度わかりやすく説明しているつもりです．命題などの導出や証明もできる限り数式による証明をつけて，曖昧なままに捨て置かないようにしています．
　また，例題や練習問題を多数配置して，理解の一助にしています．さらに，各章末には応用問題を多数載せており，確認ができるように巻末に略解を付けています．
　大学でのテキストとしてだけでなく，一般の方々にも役立つことを希望して，例題を通して感覚的にも理解できるようにしたつもりです．