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教育にも「事後ではなく予防」の考え方を!
子ども自らが辛さを乗りこえ回復していく力を育むオーストラリア発の最新教育実践
不登校、いじめ、自殺、虐待、引きこもり、自傷行為、うつ(精神疾患)、発達障害…子どもたちは今、さまざまな困難に直面しています。文部科学省、教育委員会、そして学校もこれらの問題に対処すべく努力しているわけですが、解決の糸口はいまだ見えていません。近年、「レジリエンス」という言葉をよく聞くようになりました。回復力、再起力、弾力などと訳され、心理学的には辛い局面で自らを守り、平常心を取り戻す力を指します。私たちは、これこそが現代の子どもたちに必要な力であり、課題山積の教育現場において解決の有効な手段となりえるものと考えます。
37年にわたる教員生活のなかで、問題を抱えた多くの子どもと共に歩んできた著者の山本は、定年退職後、メルボルン大学のマイケル・E・バーナード先生が開発した「YOU CAN DO IT!(YCDI)レジリエンスプログラム」に出会い、「救いを感じた」と言います。子どものメンタルヘルスの向上を図るための予防教育プログラムは、日本では研究機関などでの実践例はあるものの、諸外国のように学校教育には導入されていません。つまりいじめや不登校などの予防教育が制度的に義務づけられていないのです。これは日本の教育にとって大きな問題です。事が起きてから対策を講じるのでは遅いのですから。YCDIプログラムは、予防原則に基づいたメンタルケアに極めて有効です。このプログラムを実践すれば、怒り、悩み、落ち込みといったマイナス感情を、子ども自らがコントロールできるようになります。
本書では、このプログラムに基づく小学校での実践例を多数紹介します。実際の指導案や板書の内容、授業の様子、教師や児童の振り返りを読むと、その有効性をご理解いただけるはずです。予測不能な困難や脅威が待ちかまえる現代社会を生き抜くために必要なレジリエンスの力を高める「YCDIレジリエンスプログラム」の授業風景を紙上で確かめ、役立てていただければ幸いです。(わたなべ・りさ 東京都公立小学校教諭)
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