嵯峨野の名刹二尊院に伝わる《二十五菩薩来迎図》。土佐派の実質的な祖である室町時代の画家、土佐行広が筆をとった17幅からなる大作で、重要美術品の認定も受けた歴史的な名幅である。経年による劣化を免れず、保存の観点から、長らく全幅が公開されることはなかったが、この度、大規模な修理が令和元年から令和3年にかけて行われた。
本書では、修理後に新たに撮り下ろした高精細画像により、平安・鎌倉仏画の表現手法を踏襲しつつ、室町時代ならではの表現感覚をも加えたこの名幅の美をあますところなく紹介する。また、その修理の過程や、修理に際して行われた科学分析の結果も、写真と文章で詳細に記録するとともに、美術史・歴史学・科学調査、それぞれの分野の専門家がこの作品の成立過程とその後の歴史などを考察する論考も加え、保存修理報告書かつ研究書としても価値ある一書となっている。
【本書の特徴】
〓京都の古刹、二尊院の寺宝《二十五菩薩来迎図》にクローズアップした初めての出版
百人一首にも詠われた「小倉山」の麓にある二尊院は、釈迦如来と阿弥陀如来の二尊を本尊とすることで有名だが、《二十五菩薩来迎図》は、これまで保存の観点から、公開されることは稀で、知る人ぞ知る寺宝だった。しかも、来迎図というと、ふつうは阿弥陀如来を中心に全ての光景が一幅に描かれているものが圧倒的に多いなか、この《二十五菩薩来迎図》は、阿弥陀如来は登場せず、二十五菩薩に地蔵菩薩と竜樹菩薩を加えた27の菩薩が来迎する様子を17幅に分けて描く非常に珍しい構成をとる。本書は、その全貌を紹介する初めての出版となる。
〓土佐派の実質的な祖、土佐行広の知られざる大作の美を、高精細画像で紹介
作者の土佐行広は、「土佐」の姓が明らかな最初の画人で、現在まで続くやまと絵の画派である土佐派の実質的な祖と言われている。宮廷や幕府などの仕事でも活躍をしたこの画家が、自ら結縁者に名を連ねたこの《二十五菩薩来迎図》を、撮り下ろしの高精細画像で収録。截金や切箔などの繊細な技法の細部や、重厚な彩色の質感まで大判の写真で紹介する。
●美術、歴史、科学調査、それぞれの分野の専門家による論考を収録
来迎図の歴史における《二十五菩薩来迎図》の位置付けと特殊性について、美術史の観点からその価値を再評価する金子信久(府中市美術館学芸員)による巻頭論文をはじめ、歴史分野は高橋大樹(大津市歴史博物館学芸員)、科学分析は仲政明(嵯峨美術大学大学院研究科長)と、それぞれの分野の専門家が《二十五菩薩来迎図》と二尊院をめぐる論考を展開。
●仏画の修理を丹念に取材し、写真と文章で詳細に紹介
《二十五菩薩来迎図》17幅の修理を手掛けたのは、京都の老舗「中村弘明堂」三代目表具師の中村圭佑氏。その修理の過程を丹念に追い、京都に伝わる職人技の粋を紹介する。
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