談話の地平へ
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生成文法の枠組みで発掘されてきた、日本語の言語事実を総括する『日本語構文大全』第III巻(全III巻)。生成文法が発掘してきた成果に談話の視座から知見を加えることにより、強力なデータベースを示し、新たな地平を拓く。
〓〓「序」より
生成文法は,基本的に1つの文を分析対象として,「文(sentence)」の統語構造と意味構造を解明しようとしてきた。言語は多面体であるから,その全てを一度に知ろうとしても叶わず,自ずと,研究対象をどの面に絞るかが要求されることになる。その意味でも,生成文法が1つの文を分析対象としてきたことは,方法論として正しかったと言えよう。しかし,同時に,そのことで切り捨ててきた面も多い。我々の日常生活において,1つの文だけで事が足りる状況はさほど多くはなく,2つ以上の文を用いる状況の方が遥かに多いだろう。これがいわゆる談話を構成するのだが,2つ以上の文からなる連鎖は,何の法則もなくただ併置されるのではなく,ある一定の結束性を持って存在する筈である。これが,生成文法が解明を目指してきたものとは異種の言語現象であるならば,それを得意とする学派に委ねるのもよいかもしれない。しかし実際には,生成文法がまさに対象としてきた言語現象の中には,談話を考慮に入れざるを得ないものが非常に多いのである。(中略)
本書は,生成文法が達成してきた知見に敬意を払いつつ,それに談話構造から見える光景を加え,より地平が見渡せる俯瞰図を作成することを目標としている。談話法の要請により基本語順を変更するもの(後置文,かき混ぜ操作,分裂文)と,先行談話中の情報との照応関係の下に成り立つもの(照応関係,省略構文)の記述が,本書の中心をなす。
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