K中間子原子核の研究は、理論と実験が互いの成果に刺激を受けて飛躍的に進展している。本書では、K中間子原子核の実験的探索の流れと、これと合わせた理論研究の進展について、基礎から解説する。本書の前半では、原子核とK中間子それぞれの基本的な性質を紹介し、量子色力学に基づき、カイラル対称性の観点からK中間子の性質を議論する。さらに、散乱理論と共鳴状態の取り扱いを整理する。後半では、上述の最新の研究成果を紹介するとともに、関連する物理の進展として、状態の内部構造を定量化する指標である複合性の定式化、現代的なハイペロン散乱実験、高エネルギー衝突実験の運動量相関を用いたフェムトスコピーと呼ばれる手法などを紹介する。K中間子原子核の物理をこれから学ぼうとする学生に最適な教科書である。
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