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対話を通して相手を深く知るとともに自らを発見し,そこで生み出される人と人との関係から新たな社会が形成される。対話とは個人の営みを超えて他者と結びつき,それが社会的な広がりとなっていく基本運動である。
人は誕生以来,親子の身体関係から始まり,ことばの習得やしつけ,礼儀など社会が造りだす多くの習慣と知恵を身につけながら成長する。しかし自我が発達し他者と社会から距離をとり対象化されると,そこで対話が問題となる。
第一部では,対話者の応答を鏡として自分の姿や課題に気づき,人格を磨いていく。自然との対話では大いなる世界の意志を感じ,友愛により協働の喜びを知る。対話と協調を通して生活の向上を探求し,他者と社会との関係を通して人格を形成し,生きる意味と充実が明らかになる。
第二部では,古代から現代にいたる文学作品や聖書などを通して,対話のもつ知恵と生動的な姿が紹介される。
対話はおしゃべりではない。話すべき内容を共有しそこに焦点を当てて誠実な応答をするのが基本である。それにより考える力が養われ,創造的な人間になれるのである。よくあるように,話を逸らしたり,関係のない話題に変えてはぐらかしたりするのは,真実の対話ではない。
伝統的な理想モデルの応用では,これからの情報化やグローバル化による人類の課題には応えられない。未来へ羽ばたこうとする若者とりわけ高校生には,世界人として思考力を鍛える対話の修練は,この上ない機会となろう。
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