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静寂のなか、ゆっくりと息をする。
あの人はなにをしているか、と考える。
ちょっと憂鬱で、でも甘い。
まったくありふれてはいないけれど、
わたしたちの近くで起きていそうな
煌めく五つの人間関係。
『この夏のこともどうせ忘れる』の作者が贈る、
夜の作品集。
三人は同じ日の夜に出会い、恋に落ちた。俺は彼女に。彼女はあの男に。そして、あの男が恋をした相手は俺だった。なぜ俺なのか、とあの男に訊いてみた。健やかな馬鹿がタイプなのだという。それって悪口じゃないのか? それはともかく俺たちの一方通行の三角関係は、しかしそれほど時間を置くこともなく、べつのものへと姿を変えていった(「明日世界は終わらない」)。さまざまな登場人物たちが織り成す、ひとことでは言い表せないような繊細な人間関係を描いた、この作者ならではの珠玉の五編を収録する。
■目次
「なにも傷つけないように、おやすみ」
「明日世界は終わらない」
「不自由な大人たち」
「家族の事情」
「砂が落ちきる」
あとがき
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