緩和ケアという森にはさまざまな木(テーマ)が生えている.そんな森に足を踏み入れようとしているあなたに,初心者時代の記憶新しい著者らが記す,<緩和ケアの“超入門書”シリーズ>!!
本巻では緩和ケアにおける患者・家族とのコミュニケーションを扱う.基本的な大原則とスキルの紹介から,希死念慮や怒りなどの困難なケース,悩ましい病態ごとに考え方とその対応を解説.緩和ケア専門家でなくともコミュニケーション力の向上に役立てられる一冊.
【書評】
大きな声では言えないけれど,「コミュニケーションがちょっと苦手……」と,感じている方も少なくないのではないでしょうか.また,患者さんとのやりとりや,職場の上司やチームのメンバーとのかかわりのなかで葛藤を感じた経験など,コミュニケーションにまつわる過去の苦い記憶に胸が痛む方もいるかもしれません.でも大丈夫,コミュニケーションを学び,そのスキルを身につけるのは,今からでも遅くはありません.
日々の臨床実践において,看護師はコミュニケーションをつうじて患者とよい信頼関係を築き,またそのスキルを駆使してケアプランの達成も目指します.コミュニケーションの良し悪しが,人間関係やケアの質を決めると言っても過言ではありません.
看護師としてだけでなく,一人の人間としても,コミュニケーションはすべての原点であり,学ぶほどに奥が深く,生涯にわたって磨き続けるべき大事なスキルとも言えるでしょう.スキルを磨くためには,正しい知識を学び,それを実践しながら自分のスタイルに合うように洗練することが重要です.
そのような読者の大きなニーズに応えるべく,本書は,看護師が臨床現場でのコミュニケーションでつまずきやすいポイントについて,その背景,評価方法,対処法を明快に解説しています.著者の臨床での実践例を含むベストプラクティスが,話し方のコツや例文として紹介されているところなどは,とくに優れています.さらに,コンパクトな本のなかに,最新かつ有用なエビデンスが満載されているところも,魅力です.著者らが,「10 年前の自分に教えてあげたい!」と思うようなコンテンツを盛り込んだとのことですが,皆さんにとっても貴重なヒントがたくさん見つかるはずです.
ぜひ,本書をあなたのお気に入りの一冊に加えていただき,日々の看護支援の質向上に役立 ててください.
がん看護29巻2号(2024年3-4月号)より転載
評者●竹之内沙弥香(京都大学大学院医学研究科 人間健康科学系専攻 先端基盤看護科学講座 看護倫理学分野)
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