緩和ケアという森にはさまざまな木(テーマ)が生えている.そんな森に足を踏み入れようとしているあなたに,初心者時代の記憶新しい著者らが記す,<緩和ケアの“超入門書”シリーズ>!!
本巻では呼吸困難への対応を主軸に,各呼吸器疾患の症状緩和までを取り上げた.専門の異なる執筆陣により多角的アプローチを図り,呼吸器症状マネジメントの最適解についてプラクティカルな内容満載で伝える.
【書評】
本書は,「〈ようこそ緩和ケアの森〉シリーズ」の一冊で,呼吸器症状を話題に掘り下げたものです.全体的にとても簡潔かつ読みやすくまとめられているので,あっという間に読了してしまいます.まとまった時間がとりづらいという方は,項目ごとの冒頭にある「これで脱・初心者!つまずきやすいポイント」に注目してください.ここを読むだけでも知識の補填としては,十分に満足感が得られるまとめ方がされています.
さて,本書のなかで,看護師の立場からとくにお勧めしたい箇所は,非薬物療法の「心理療法」の項目です.心理療法と聞くと,「心理士さん向けかな?」と感じるかもしれませんが,心理療法のエッセンスを日常臨床に取り入れる工夫について,とてもわかりやすく解説されています.呼吸困難は,不安と関連する症状と言われていますので,心理療法のエッセンスを活用することはとても重要です.私見ではありますが,心理療法を活用した呼吸困難に対する支援は,今後,エビデンスが蓄積していく分野のように感じています.ぜひとも本書に紹介されています,明日の臨床にすぐに活かせる心理療法をチェックしてください.心理療法のほか,非薬物療法では,リハビリテーションと日常の工夫についても紹介されており,必見です.
また,本書には,著者の先生方の実体験がColumn や失敗談などで紹介されています.「呼吸困難を訴える患者さんに,最初にする大切なことは?」「呼吸困難と不安が同時に起こっているときの声かけで注意することは?」「心理職への依頼を患者さんに伝えるときには?」……,いずれも読んでいて,「なるほど!」と思うものばかりで,疑似体験を通じて,コミュニケーショ ンの引き出しがどんどん増えていきます.このように,本書は,呼吸器症状の知識や実践,コミュニケーションの参考になる内容が盛りだくさんです.ぜひとも本書を皆さんの手元において,日々の看護実践に役立てていただきたいと思います.
がん看護29巻4号(2024年7-8月号)より転載
評者●角甲 純(三重大学大学院医学系研究科看護学専攻/がん看護専門看護師)
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