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現行制度会計では、資産負債観の台頭により、ボトムラインの利益が包括利益となった。しかし、純利益の計算が行われなくなったわけではない。純利益は包括利益算定の過程で求められることになった。すなわち、利益として、包括利益も重要であるが、純利益も重要であるということである。ただし、包括利益算定の過程で求められる純利益とは資産負債観の枠組みの中における純利益であり、収益費用観におけるところの純利益とはその性格を異にする。
会計の中心は利益の算定にあることから、どのような利益を算定すべきかということが重要な問題となる。それにもかかわらず、現行制度会計では、純粋に収益費用観または資産負債観に立脚して利益計算が行われていないのが現状である。利益観とは、どちらか一方の利益観に立って、会計における利益計算構造を示すものである。そのため、純利益と包括利益は異なる利益観を前提としていることから、その利益計算構造も異なる。
本書では、収益費用観、資産負債観という2つの利益観を単に純利益や包括利益と結びつけるだけでなく、それぞれの利益がいかなる観点のもとにいかに算定されるべきかを探究する。
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