心臓リハビリテーションのエビデンスを極める
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心臓リハビリテーション(心リハ)と聞くと「運動療法」を想像される方が多いであろう。確かに心リハを行ううえで運動療法は重要な要素であるが、9年ぶりに発刊された「2021年改訂版 心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン」の第1章の中で、心リハの構成要素は運動療法に加えて、患者教育、カウンセリング、医学的評価、そして疾病管理の5つの柱に組み替えられ、現在の心リハが再入院予防、フレイル予防、抑うつ改善にも寄与するべきであることがうたわれている。包括的な心リハプログラムを行ううえで重要なのは、多職種による多面的介入である。疾病の状態や重症度、社会的背景に関する評価を行い、各職種に応じた支援・指導を行うことが必要となるが、元来、多職種連携を得意とするこの領域において、それぞれの職種の強みを活かしたプログラム遂行が期待される。
20世紀半ばに、心筋梗塞後の患者が運動プログラムに参画することで死亡リスクを高めることなく、身体的・生理学的恩恵を享受できたとの報告以降、心リハプログラムが全世界で施行されるようになった。歴史としては浅いものの、本邦では未曾有の超高齢社会に突入し、心リハを要する対象疾患が純粋な虚血性心疾患から心不全に大きく変化している。そのような中であっても、世界中で行われているフェーズ2心リハプログラムからは、8割以上が運動療法プログラムを提供し、代替プログラムはほとんどみられなかったという点で、時代とともに柔軟なプログラム変革が進行していない問題点を含んでいる。コロナ禍で当たり前となったリモート診療が、この分野に応用できるのかなど、議論は尽きない。
そこで、本特集は次世代を担われる方々を執筆者に迎え、「最新の心リハを極める」ことを目標に企画させていただき、以下の3つの章に分けて心リハを掘り下げることとした。第I章は「ディベートで考える心リハ」として、近年の心リハが抱える問題点や時代の変化にどう順応していくか、ディベート方式で心リハを語っていただいた。回復期施設での心リハ保険収載が実現した今、先駆けの施設が回復期・維持期にどのような取り組みを行っているか学ぶ機会でもある。
第II章は「新しい分野の心リハを知る」として、循環器領域の疾患多様性に心リハがどのような役割を演ずるか、時代が変わっても変わらない部分をどうしていくか、多職種協働の先駆けである心リハの果たすべき役割を明確にしていただくこととした。心理社会的および復職支援に関するカウンセリングは、現代の心リハにおいては欠かすことのできない重要なテーマである。
第III章として「各分野のトピックスを知る」を設け、サルコペニア、カヘキシアから腎臓リハ、腫瘍循環器リハに至るまで、読者が知りたいと思われる内容を集めて、勉強できる一冊に仕上げることを目指した。
本特集によって読者の心リハに対する理解がより深まれば幸いである。
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