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本書のテーマは、軍という実力組織を動かす際に頭脳・神経の役割を果たす「指揮管制」の機能と、そこに取り入れられつつある人工知能「AI」だ。
この問題を考えるために著者・井上孝司は、第二次世界大戦にはじまる防空システムを引き合いに出す。いつの時代においても最もスピーディーな武器である空からの脅威――航空機とミサイルを迎え撃つことは、人類に迅速かつ正確な指揮管制を追求しつづけることを強いた。指揮所に広げた地図と駒はいつしかコンピューター画面に姿を変え、指令の伝達方法は電話から無線通信、そしてデータリンクへとあり方を変えて、高速化・正確化していった。かくして現代の戦闘指揮所は、最前線よりもいくぶんか後方あるいは地球の裏側にある、数面から何十面のディスプレイ画面を並べた部屋に設営されるようになった。
ここに登場してきたのが人工知能「AI」だ。きまりきった情報処理だけをこなすソフトウェア(プログラム)に対し、学習に基づく推論をはじき出すAIには、より多くの役割が期待できる。実際にAIと戦闘機パイロットでバーチャルな空中戦を行った実験では、かなり有利な条件ではあるもののAIが操る戦闘機が勝利した。戦場ではAIを搭載したミサイルが登場し、偵察衛星の写真解析をAIに任せることも始まった。ではそのAIに、作戦指揮における意思決定を肩代わりさせることもできるのか? 各国がどのようにAIを取り入れ、運用しているのかを解説する。
ときを同じくして世界の戦場で始まっているのが、戦闘空間の「マルチドメイン化」「領域横断化」だ。指揮管制機能はどのような進化を遂げ、対応していくのか?
1冊読めば、現代戦における作戦指揮のしくみ、IT技術・AI技術の活用を深く知ることができる。
軍事とITに強いテクニカルライター・井上孝司が2013年からマイナビニュースで連載している人気連載『軍事とIT』を、重要なテーマごとに再編集・アップデートしたシリーズ「わかりやすい防衛テクノロジー」の2冊め。
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