本書は、著者ブルスティンがアメリカで実施した「ナラティブ・インクワイアリー」に基づく質的研究手法をもとにした、ボストンカレッジ・ワーキングプロジェクトの成果と、心理学をはじめとした最先端の「仕事の科学」の知見に基づく提言である。ここでは、ナラティブが、個人の限られた経験にとどまることなく、社会への重要な提言や示唆を含んだものとして展開されている。
コロナ禍の中、アメリカで起きている仕事にまつわる問題は、すでに日本においても多くの人に実感をもって受け止められるものとなった。
目次に示した主要なテーマを見ていただければ、本書が取り扱っている内容の広さ、深さを理解いただけようが、「仕事」が人間にもたらす根源的な意義について、経済的な面はもとより、その精神的なもの、人の尊厳を支える柱ともなることが、この中で語られる多くのケースから窺うことができる。
これからの社会の中でさらに大切となる、人間が生まれながらに持つ権利としての「仕事」、さらには、ディーセント・ワークを超えて、尊厳ある「人間の仕事」の未来への一歩を、どう模索すべきかという考え方を本書は知らしめることだろう。
1.生きていること:生活の中心的役割としての仕事
2.生き残り、活き活きと働けること
3.他者と共にいること
4.私たち自身よりもっと大きなものの一部であること
5.やる気を出し、最高の自分になること
6.ケアできること
7.抑圧や嫌がらせを受けずに働けること
8.仕事がないこと
9.尊厳を持ち、機会を得て働けること 人間の生得権
概説 人間の仕事を理解する
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