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徴兵されて陸軍に入隊することを危惧して海軍に奉職した著者が、海軍提督三部作『山本五十六』『米内光政』『井上成美』や『軍艦長門の生涯』には書けなかった海軍を、実体験や取材メモをもとに綴ったエッセイ五〇篇。海軍軍人のスマートさ、一方での蛮勇・武勇伝・失敗談など、豊富な体験を基に人間味たっぷりに描く〝わがネイビー賛歌〟。
単行本未収録の講演録「日本海軍の伝統と気風」を増補。
「ネイビーはスマートネスを以てモットーとする」陸軍とちがい敵性国語廃止などと野暮なことは言わなかったけれど……(「青春の旅立ち」)
制服の海軍士官は雨の日でも傘をさすことを許されていない。外出中にわか雨にあったらどうするか? 中尉はこう教わった。「ゆっくり濡れてこい」(「なぜ負けた」)
「お前は何故海軍を志願したか」「はいッ、陸軍がきらいだからであります」試験官の中佐がニヤッとした。(「人のいやがる軍隊に」)
「海軍士官はまずジェントルマンたれ」と知性と教養の涵養を唱えた兵学校長こそ、井上成美中将その人であった。(「われらが知性」)
著者自ら「海軍のよき伝統とは言い条、いつどんなかたちで海軍生活をしたかによる」と記す通り、よき時代に巡り合わせた経験が主となってはいるが、初出が週刊誌連載だったこともあり、軍隊の悲惨さ愚かさから潜水艦のトイレ事情などの裏話まで、読む者を飽きさせない多彩なエピソードに満ちている。
【目次より】
こぼれ話の始まる話/青春の旅立ち/なぜ負けた/カールビンソン/仰ぐ誉れの軍艦旗/サセコイ/へんな英語/ヘル談哀話/まあうれしい/艦長自ら操艦しつつあり/人殺し/軍人勅諭/よく学びよく遊び/町人服/大蔵省は海軍省/泥水すすり草をかみ/気ヲツケラレマス/人のいやがる軍隊に/六ツかしござる/ドナウ河の水深/靴磨き海軍/見て地獄/次元が低い/逆ごよみ/ミッドウェー/われらが知性/乱数表/腐れ士官の捨てどころ/坊さんパイロット/海軍馬鹿/ネルソンと東郷/親英派と親独派/罐焚き/侯爵の植木屋/文壇海軍見立て/航空母艦の幽霊/公用特急券/少将の墓/海軍士官とフランス語/狸の親ごころ/ロイヤル・サルート/オモチャの造船所/海軍糞尿譚/満艦飾/遺骨還送/女たちの大東亜戦争/ラッタルはかけあし/考課表/日付変更線/こぼれ話の終る話/講演録「日本海軍の伝統と気風」
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