取り寄せ不可
『辻音楽師』
妻のがんの手術が成功した69歳の男。男はかねてから小説を書いていたが、これまで応募した賞に入選することはなく、世評も得てはいない。男はこの手術を機に、世間に評価される小説を彼女が生きているうちに書くことをあらためて決意する。男は過去の村上春樹作品との出会い、村上作品の中で重要な要素となるクラシック音楽について、シューベルト「冬の旅」中の「辻音楽師」について、ポーの「群集の人」などについて、様々に思考する。そして次に書く作品のモチーフを偶然街角で見た「あるもの」にすることを決める。
『泰平の逸民』
1986年(昭和61年)。3年前に結婚した妻と別れ、仕事も辞めて、新井薬師商店街裏のアパートに引っ越してきた30歳の主人公。株式投資で得た1400万円の預貯金がありすぐに食うには困らないが、何もすることがない。やがて主人公は近所の中野ブロードウェイやサンモールを散策するようになり、遊歩の楽しさを発見する。また自分と同じように中野を散策する人々を発見、「ウディ・アレン」「うさぎ」「フランス人形」などと綽名をつけて観察する。ある日綽名を付けたひとり「若年寄」の後をつけてゆく中で、男は自分の隠遁生活(のようなもの)の意味を悟る――。
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