初代最高裁判所長官・三淵忠彦は定年を前にした昭和25(1950)年2月、随筆集の『世間と人間』(朝日新聞社刊)を書き上げた。長官の肩書きから思い浮かぶ堅いイメージとは裏腹に、これがなかなか面白い。食べ物、動物、自然、裁判など内容も多岐に及ぶ。福島県・会津にルーツを持ち、戊辰戦争から敗者としての辛苦を味わい、第二次世界大戦敗戦後に民主裁判の礎を築いた忠彦が、人としてどうあるべきか、何を大切にするべきかをつづったエッセーは、むしろ現代にこそ、そしてこれからも読み継がれてほしい内容である。あらためて、忠彦の生き方に触れ、当時の様子を垣間見たり、何かを感じたりすることには意味があるのではないか。そのように考え、この随筆集を復刻することにした。日本国憲法施行から76年、憲法記念日に。(『世間と人間 [復刻版]』「はじめに」より)
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