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五七五の音の数ごとに季語をまとめた歳時記は初めての試みである。
俳句実作者にとってはこれほど便利な歳時記はない。
すでに今春刊行されて、好評を博した春篇に次いで夏篇の歳時記刊行となった本書は夏本番を迎えるとき、句会・吟行のおりに必携の書である。夏の季語は1音の「蚊」「鵜」から始まり、13音の「黒実の鶯神楽の実」(くろみのうぐいすかぐらのみ、スイカズラ科の落葉低木。実は黒紫色で円錐形。食用としては「ハスカップ」の名が知られる)まで、他の季節よりも数が多い。「夕立」、「茄子漬」、「南風」(はえ)、「冷奴」、「瓜」、「浴衣」など、また「祭り」に関する季語「葵祭」「祇園祭」「三社祭」「神田祭」なども多く、華やかな季語が多い。「扇風機」「ハンモック」「熱帯魚」「アロハシャツ」など、都市のモダンな生活を表す言葉も多いのが特徴だ。
「俳句は五七五の定型詩です。五七五の形にきれいに並んだ言葉の美しさは俳句の大きな魅力です。四季折々の風物である季語を詠みこむこともまた、俳句の魅力です。さらにいえば、俳句の魅力は叙景です。人事句の面白さを否定するつもりはありませんが、簡潔な言葉で情景を表現できたときの喜びは大きい」、監修者の岸本尚毅氏はこのように述べながら、高浜虚子の
「舟に乗る人や眞菰に隠れ去る」
という句が
「舟に乗る人夏草にかくれけり」
という句が原形であり、どういった経緯で推敲を重ねられたかを推理している。
「推敲のポイントの第一は『夏草』という季語です。舟に乗るような場所ですから『夏草』では漠然としている。『夏草』より、水辺に生えているような草の名前を詠みこんだほうがよさそうです」「さて、この○○○にあてはまる季語がうまく見つかるでしょうか。夏の水辺に生える草で、丈が高く、しかも三音のもの。虚子はおそらく、最初「夏草」と詠んだものが、じつは「真菰」だったと思い定めて「夏草」を「真菰」に改めたのでしょう。句作りの基本はあくまでも実景ですが、その実景をよりリアルなものにするための推敲も句作りの楽しみです。虚子の『舟に乗る』の句のように、音数を変えながら、その情景によりふさわしい季語に置き換える場合、『音数でひく俳句歳時記』が句作や推敲の助けとなります。この本が読者の皆さんに、季語との良き出会いをもたらすことを期待しています」。
『音数で引く歳時記・夏』はこの夏に句作に励むすべての人に贈り物となる本である。
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