本書は、国際経済紛争の解決について主に手続法の側面から考察したものである。
特に、本書の対象である国際通商と国際投資分野における紛争解決の発展には特記すべきものがある。国際通商と投資分野においては、紛争解決の量的成長だけでなく、多くの紛争が W T O 紛争解決手続と投資仲裁に基づいて、準司法的機関により法準則に基づいて「司法的に」解決されることが多くなったのである。国際通商と投資分野における「司法的」解決の発展は、両分野における紛争解決の手続法的側面における発展につながり、それに伴い国際経済紛争解決の手続的論点の正確な把握が必要になってきた。それに伴い、それぞれの分野における手続法的な展開に焦点を合わせた日本語による先行研究が出現したのも驚きでない。しかし、それらの多くは両分野の専門家や実務家向けの専門的な内容のもので、学部生や一般の読者には難解である難点があった。本書はこのような間隙を縫って学部生や一般の読者が手に取りやすいものとして企画された。国際法、国際経済法や国際関係論授業の(準)教科書、あるいは、参考書として、通商の部や投資の部を一まとめにみても、あるいは、興味のある章ごとにみても構わないと思われる。
紛争の解決について考えることで、手続と実体の不可分性、手続こそ社会において実体を形作り、影響する(潜在)力を有していることが、そして、(国際)社会における紛争解決を通じた法による社会統制の意味に気づくきっかけになれば、本書の執筆者一同の法外の喜びである。
[目次]
第1章 国際経済紛争の法的解決の歴史的展開と現状
第2章 国際レジーム論からみた国際経済紛争解決
第3章 パネル・上級委員会の手続概要
第4章 勧告・裁定の実施
第5章 パネル・上級委員会以外の紛争解決手続
第6章 WTO 紛争解決手続における透明性と説明責任
第7章 地域貿易協定における新展開
第8章 仲裁規則の選択と仲裁廷の構成
第9章 仲裁廷構成後から本案判断まで
第10章 本案判断とその後および国家間手続
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