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因果推論に基づいた現代的分析
未来を担う子どもたちを育む学校教育。本書は経済学をベースに社会学・心理学・認知科学等からの知見を取り入れ、少人数学級がもたらす学力・非認知能力の向上、学校教員の過重労働の軽減、教員不足解消への採用方策、教員のウェルビーイング、政策のコスト・パフォーマンス分析などの論点を、エビデンスを重視して検証する。教育経済学の新地平。
少人数学級制度は、子どもや教員にどんな影響をもたらすのか。
現在導入が始まっている小学校での35人学級の教育的・経済的効果を実証的に分析。生徒レベルの詳細なデータを用い、因果推論の手法を活用して、35人学級に代表される少人数学級教育は子どもの学力を向上させるのか、そして近年その重要性が認識されている子どもの「非認知能力」を伸ばす効果はあるのかを解き明かすとともに、少人数学級はいじめや格差を縮小・是正するか、といった「効果の異質性」についても言及する。
また、少人数学級の導入がもたらす教員配置数の増加によって教師の就業環境が改善し、労働時間の減少やストレスの低減をもたらすことを、著者自身の研究成果に基づいて明らかにする。さらに、少人数学級政策の導入には、教員の増大に伴う巨額の費用が発生する。第5章ではやや視点をマクロの財政面に置き、少人数学級は巨額の費用負担に見合うほどの効果を持つのかについて、費用対効果の視点から国内外の研究成果をもとに試算する。
EBPM(科学的根拠に基づく政策形成)の波は教育行政にも押し寄せている。教育領域におけるEBPMは、他領域におけるそれと同様に考えてよいのか、それとも教育領域に独自の性質があるのか。これまでの研究に基づきながら、EBPMを教育分野に適用することの必要性を論じる。
2021年のノーベル経済学賞は、実験が難しい経済学において、自然実験などを活用した因果推論の手法を確立・発展させた研究者に贈られた。中でも、受賞者の一人であるアングリスト教授は,1999年に少人数学級の効果を検証した論文を発表し、その後の研究を切り開いたことが評価された。本書はアングリスト教授の分析手法を応用して日本の実情に適用した分析結果を提示するなど、現代的な因果推論に基づく実証分析の結果を提示するという点で学術的な貢献を持つ。
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