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2度の世界大戦で英国が実施した長距離封鎖は合法だったのか。そして、海上封鎖は現代でも有効な海戦の方法であり続けているのか。この2つの疑問が本書の出発点となっている。
本書の主たる分析対象である海上封鎖は、戦時に敵国通商を遮断する海戦の方法の1つであり、主力軍艦同士の砲撃戦のような華々しいものではなく、軍艦が商船を停船させ船内を捜索するような地味な戦いの累積である。一方、敵国港には様々な国の船舶が出入りして貿易が行われているため、敵国商船のみでなく、これら全てを統制する必要が生じる。
戦時の敵国通商は、交戦国以外には自国繁栄に必須である一方、他方交戦国には敵国戦力を増大させ敗北の原因となり得る存在である。すなわち、戦時通商の問題は、一方では「海洋は戦時にも万人共通の利用に供される」との主張に、他方では「戦時には交戦国は敵国通商を遮断する権利がある」との主張に支えられている。両者の対立の結果、均衡点に海上封鎖と海上捕獲の2つが成立した。前者は全ての船舶・貨物の没収を認める代わりに実施海域を制限し、後者はあらゆる海域での措置を認める代わりに対象船舶・貨物の国籍・種類を制限する。本書は前者を分析対象とし、海上封鎖がいかなるもので法的にいかに説明し得るかを分析し、その現代的意義を考察する。
海上封鎖はいかなる条件の下で許容されるかが、常に論争の焦点になってきた。その条件は、それぞれの時代の海戦と海運をめぐる環境の変化の影響を受けて常に変化してきたが、一方で一貫して実効性という概念で説明されてきた。実効性とは、実際に通航を阻止できる兵力の配備を伴って初めて海上封鎖が合法となるというものであり、国家実行の蓄積の中で徐々にその性質が明らかとなってきた概念である。実効性は1856年のパリ宣言及び1909年のロンドン宣言に明文化されたが、両宣言を中心とする封鎖法が、近接封鎖、すなわち、被封鎖沿岸の近傍に封鎖兵力を配備する海上封鎖を要求していたのか、又は、長距離封鎖、すなわち、封鎖沿岸から相当に離れた位置で実施される海上封鎖を許容していたかは、論争が続いている。
さらに20世紀に入ると、海戦及び海運環境の変化、交戦国側の主張の優勢及び第2次大戦後の戦争違法化といった新たな状況が出現し、海上封鎖の実施にいかなる影響を及ぼしているかが明らかでない。これら状況が封鎖法を変化させたか否かについては、元々の封鎖法が近接封鎖を要求していたのか否かで異なる。
これらの問題が明らかでないために、現代の海上封鎖がいかなるもので、法的にどのような説明が可能であるかは明らかではなく、さらには現代では海上封鎖は検討に値する海戦の方法ではなくなったと評する多くの論者が登場した。
本書は、17世紀以降今日に至る国家実行、判例及び学説を網羅的に分析して長距離封鎖の合法性を評価するとともに、20世紀以降に生起した状況が及ぼした影響の観点から封鎖法を捉え直し、その現代的意義を明らかにし、過去及び今後設定される海上封鎖に統一的な評…
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