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私たちの誰もが夜夢を見る。そして夢では、空を飛んだり、亡くなった人に出会ったり、動物になったりと、現実の世界からみれば荒唐無稽で非合理だとみなされることがたびたび起こる。それゆえ、通常私たちは、夜見た夢を自身の現実と直接結び付けては考えない。
しかし、心理療法家である著者は、セラピーの場で、クライエントの夢が直接的なリアリティをもつことをたびたび経験してきた。ことに、現実の大きな変化や、身体の変化、死との関わりが問題になるときなどには、夢と現実が交錯するような直接性の次元が現れてくることがあるという。
それはいったい、どうしてなのだろうか?
そもそも、夢はなぜ私たちを訪れるのか?
どこから生まれてくるのか?
そこで起こる非合理な事象は、日常を生きる私たちにとって、どのような意味をもつのか?
また、なぜ心理療法の場では、象徴的理解では捉えきれない直接的なリアリティをもった夢が語られるのだろうか?
古来、わが国には、説話や物語、神話などに、夢に関する記述が数多くみられる。かつて夢は人びとにとっては現実であり、夢のお告げは日々の行動の指針となるなど、大きな影響力をもっていた。
心理療法の場で語られるような象徴性を超えるリアリティをもつ夢を理解するには、こうした象徴が生まれる以前の、つまり前近代の「こころの古層」にその手がかりがあるかもしれない。そして、それを探ることによって、私たちの「こころ」そのものについての理解も深まるかもしれない。
ユング派分析家でもある著者が、夢に関する多くの文献や心理療法の中で語られる夢の事例などを駆使しつつ、私たちの無意識の中に眠る「こころの古層」を手がかりに、夢のもつ意味をさまざまな角度から考察し読み解こうとしたのが本書である。
深層心理を扱う心理療法家だけでなく、広く夢に関心をもつすべての人たちにも本書をお薦めしたい。
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