全きヒューマニズム

全きヒューマニズム

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出版社
知泉書館
著者名
ジャック・マリタン , 荒木慎一郎
価格
2,970円(本体2,700円+税)
発行年月
2023年3月
判型
四六判
ISBN
9784862853820

資本主義が先鋭化し欲望は膨張を続け,最新鋭の武器を駆使した戦火の絶えない現代,人間を真に人間とする「全きヒューマニズム」はどのように可能か。
フランスの哲学者でカトリック思想の指導者であった著者によれば,超越的なものを排除してヒューマニズムを定義することはできない。本書は,ルネサンス以降近代の人間中心的ヒューマニズムを無神論的であると批判し,中世キリスト教社会における神中心的ヒューマニズムこそ「全きヒューマニズム」であると唱えて,その理念を明らかにする。その上で,キリスト信者は信仰に基づき政治や社会問題にいかにコミットすべきか,キリスト信者以外の人々といかに連帯すべきかを説き,人間の人格の自由,多元主義,友愛的共同体の創設など新しい「キリスト教社会」の歴史的特色を明示する。
本書は,第二次大戦へ突入する前夜,1936年に出版され,左右両翼の全体主義の台頭に翻弄されていた当時のフランスの若者に新しい社会の建設への指針とインスピレーションを与えたが,後にその影響は南米の社会運動へと拡大した。今日,本書が問題とした全体主義の悪夢は新興国を中心に再び頭をもたげ,著者の提言はいまだ有効だと言わざるを得ない。誰もが知るヒューマニズムという言葉の真の意味とは何か。ヒューマニズムに関心のある読者にとって,教科書的理解を越えて,その意味を考える機会となろう。

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