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〈個物の救済〉からすべての人間を言祝ぐ〈真の普遍史〉へ
「歴史」に翻弄された思想家ベンヤミンは、「歴史」をどう捉えていたのか――ドイツ精神史との対話、同時代人との対決のなかにベンヤミンの思考の軌跡をたどり、その未完の「歴史哲学」の核心に迫る。「些末なものへの畏敬心」を胸に〈真の普遍史〉を追求した思想家の姿を、新たな角度から描き上げた画期的論考。
「人類史は破局の連続であり、そのなかではたえず瓦礫と髑髏が生み出され、それらは物言わぬ口でこの世の歴史の儚さを告げているが、しかしまさにこの破局のなかで生み出されたものこそが、破局の連続の断ち切られた世界を、「メシア的な世界」を、「普遍史」を想像するための縁となる」(本書より)
◎目次
序論
一 「神は細部に潜む」――ベンヤミンのミクロロギー
二 「文学は歴史の感覚器官となる」――批評家ベンヤミンの歴史哲学
三 ベンヤミンの「歴史哲学」とは何か
四 マルクス主義のラビ、文化学とミクロストリアの先駆者としてのベンヤミン
五 ミクロロギーと普遍史――章構成
第一章 形態(ゲシュタルト)と歴史――ベンヤミンのグンドルフ批判
一 ゲシュタルトとは何か
二 グンドルフのゲシュタルト理論
三 ベンヤミンのグンドルフ批判――『ゲーテの親和力』
四 ゲシュタルトと歴史――ゲーテの「形態学」をめぐって
五 グンドルフ批判から歴史の「方舟」の建造へ
第二章 文献学と歴史――グリムからベンヤミンへ
一 パリンプセストの解読
二 ドイツ文献学と「些末なものへの畏敬心」
三 古ドイツの森の測量術――グリム兄弟とA・W・シュレーゲル
四 ドイツ文献学の境界画定――ヤーコプ・グリムとシェーラー
五 境界領域への眼差し――ベンヤミンとグリム兄弟
六 灰の文献学
第三章 寓意(アレゴリー)と歴史――ベンヤミンにおける「救済史」の理念
一 自然史と救済史――『ドイツ哀悼劇の根源』における二つの理念
二 アレゴリーと象徴――一八〇〇年頃の美学言説
三 髑髏と神像――ベンヤミンのアレゴリー論
四 受難史から救済史へ――復活のアレゴリー
五 救済史から普遍史へ――「歴史の天使」の眼差し
第四章 原型と歴史――ベンヤミンのクラーゲス読解
一 原型論とミクロロギー
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