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第一歌集にして、遺歌集。
若くして不慮の死をとげた最愛の娘さんと、あとに遺されたお孫さんへの切々たる思いが作者の歌の原点にある。挽歌とひと言では括れぬ男の苦悩が赤裸々に綴られている。愛する家族や故郷の佐賀、住み慣れた松戸の高層階からの景観や身の巡りを詠んだ作品に、心温かな一人の男性像が浮かび上がる。上梓を夢見つつ、結局この第一歌集が彼の遺歌集となったことには語る言葉が見つからない。(「ひのくに短歌会」山野吾郎・本書帯文より)
【5首選】
「無花果が今日は三つ」という妻の声に炎暑の朝が始まる
臨終を告げられたりしわが娘隣に孫の産声きこゆ
走り来る孫の仕草にありありと娘(こ)の蘇る春の草原
故郷の宅急便を包みたる佐賀の新聞広げて読みぬ
内臓の一つが突然激怒する青き地球に雪降り積もる日
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