【解説より】
本書は嘉慶四(1799)年の上諭を翻訳し、テーマ別に選別・整理したものである。紙幅の都合もあって全ての上諭を包括できているわけではないが、和?の排除、広開言路の宣言、海賊対策、漕運改革や徴税など多様な内容を取り上げ、親政初年における統治の内容を総覧していくことを目指した。嘉慶四年は、清朝にとって転機となった重要な一年であった。正月初三日の朝、太上皇帝、すなわち乾隆帝(在位1735-1795)が89歳で亡くなり、嘉慶帝(在位1796-1820)による親政が始まったのである。
(中略)
嘉慶帝の親政は、しばしば嘉慶維新と呼ばれる。維新の語は『書経』胤征の「咸與維新(咸與に維れ新にせん)」などを由来とする。皆とともに新たな政治を始めるという意味で用いられ、清以前にも皇帝の代替わりに際してしばしば用いられた。(中略)
それでは、嘉慶帝は清朝を如何にして立て直そうと試みたのだろうか。また嘉慶帝の親政によって、清朝の統治は如何に変化したのだろうか。或いは、変化しなかったのだろうか。皇帝政治を論じる場合、皇帝の伝記的な研究や権力構造からの分析など、いくつかの手法が想定され、その手法ごとに描かれる皇帝像もまた様々なものとなる。本書では幾つか考えられる研究手法のなかで上諭の総覧を選び、嘉慶帝が直面していた課題や試行錯誤の過程を示すことを試みた。中央に集められた情報や政策提案に対応していく日々の営みの上に皇帝の権力が生まれ、嘉慶帝の親政が実現していったと考えるからである。
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