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精神医学は精神的な疾患とその治療に関する学である。その出発点をなすのは精神障害の本質の科学的認識である。未開民族では精神疾患は敵意のある悪鬼の影響にされるのが常で、東洋では今日でも精神疾患者は神に烙印を捺された人ということになっている。古代ギリシャの医師たちはすでに、狂気の座を脳に置き、精神疾患をある種の身体的障害と結びつけるほどに進化していた。それに対して中世は、一方ではスコラ哲学的、他方では宗教的・迷信的な推測を押しつけ、自然科学的理解の既存の芽を急速に排除した。民衆は狂人を聖者として崇め、魔女裁判の判事は推測上の妄想的な罪のために狂者を尋問室や火刑台の上で罰させた。
科学の復興と特に医学の発展とともに、次第に医師たちの興味はまた精神疾患者に向けられはじめた。ただ、精神障害は医学的見地からのみ正しく追究され認識されうるのだという明らかな知識が一般に通用するに達するまで一世紀を要した。精神医学はその時から、強い困難にもかかわらず、医学の一つの力強い分枝にまで目ざましく急速に発展してきた。
今ではわれわれは、精神疾患においては精神現象の形が多かれ少なかれ、脳、特に大脳皮質の精細な変化を呈示するのだということを知っている。こうした知識によって精神医学は、自然科学的な手段と原則にもとづいて邁進する確固たる明らかな目標を獲得したのである。(原著第一巻、緒論より)
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