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紙芝居『けんかだま』は、高橋五山ならではの独自性のある表現を探求した、他に類を見ない作品です。腹をたてると相手も腹をたてる。それが「けんかだま」。この物語が不毛な争いごとやけんかやいじめを止めるヒントになれば幸いです。
あらすじは次のようなものです。子犬のポチが仲良しの黒ちゃんのところへ遊びに行く途中、道の真中に赤い小さい玉がころがってきた。ポチがよけるのに玉がよって来るので怒ったポチが玉をおさえると、赤い玉はぷっとふくれる。ポンとけると、玉はむくむくふくれて、道いっぱいになる。ポチの吠える声をきいてお母さんが来た。「あの赤い玉はね、けんかのすきな玉なのです。だからかまえばかまうほど大きくふくれて、しまつにこまってしまいます。しずかにそっとしとけばいいの」と言う。けんかのすきな赤い玉はだれも相手がなくなるとだんだん小さくなって、しまいにはきえてしまう。
この『けんかだま』の原話については、これまで指摘されたことも検討されたこともないですが、「相手にするほど大きくなる」という話の根幹はイソップ物語の「ヘラクレスとアテナ」に共通しています。ヘラクレスが道を歩いていると、リンゴのようなものが落ちていて、踏みつぶそうとすると2倍の大きさになる話です。五山はこの物語を参考にして紙芝居に仕立てたと推察されます。そして、犬を主人公に、かわいらしく、わかりやすく、楽しいはり絵で表現しました。
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