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包括ケアを実現するカギとなるのは、医療と福祉サービスへの市民参加である――
2025年までの普及が目指されている「地域包括ケアシステム」では、高齢者が最期まで地域で暮らせるよう、必要な時に必要な医療や介護を迅速に受け、自立した生活を営むことができるように構想されている。またこのシステムでは、高齢者が豊かな生活を送ることができるよう、地域住民によるボランティア活動も期待されている。一方で、確かに在宅医療・介護の定着と充実には住民参加と住民主体が必要であるものの、住民に対する意識づけ、動機づけが困難であるのが実情といわれている。
そこで、本書では医療や介護サービス供給体としての協同組合が展開する「地域包括ケアシステム」に注目する。JA長野厚生連佐久総合病院(佐久市)は「農民とともに」という理念のもと、農村医療に尽力し、特に村民と築いた全村健康管理は健診システムのモデルになる等、日本の保健医療政策に影響を与えてきた。また伊勢湾台風の被災から住民が立ち上げた南医療生活協同組合(名古屋市)は、住民参加の医療と介護を提供し、現在では「おたがいさま運動」を通じて、利用者、地域住民、専門職のつながりを土台にした「地域包括ケアシステム」のモデルとして注目される。両者の特徴は専門職と地域住民の対等な参加と協働にある。
日本の医制は、病院や診療所の自由開業性を前提としていたが、日本初の協同組合法である産業組合法がドイツから輸入され、そのなかで医療の協同組合が誕生した。その後、医療の協同組合は医療のない過疎の農村や都市の貧困地域で人々の暮らしを助け、普及していく。日本には住民の力で、医療や介護を創ってきた歴史と経験がある。
このような日本の医療・介護供給体としての協同組合は、専門職と市民(利用者)が対等な立場で参加する、世界でも類を見ない組織であり、優れたサービスを提供するだけでなく、本来事業以外の新たな社会的価値を生み出すメカニズムを持つものである。本書はこれを実証的に検証するものである。
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