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室町期の口語資料「抄物」から語史や文法変化、特徴的な文体・表現を見出し、日本語の史的変遷研究に寄与すると共に、文献学的な価値をも考究する。付録として抄物の利用法を説く。
■木田章義(京都大学名誉教授)「序文」より
山本佐和子氏は本書で、自らの抱く目的と方法に従って、語彙的研究、文法的研究、書誌的研究など幅広く分析されている。その目次を見れば、山本氏の研究の視野の広さが理解できるし、山本氏の興味の方向も分かる。対象とした語彙や語法についての分析や論述を見ていると、それらの現象を解明した上で、その現象を国語史の流れの中に位置づけようとするひたむきさが感じられる。そのひたむきさが用例の博捜や先行文献の丁寧な追究、抄物以外の資料の調査へと〓がっているようである。単なるこれまでの成果のまとめだけでなく、これからの発展の可能性を含んだ論文の集積である。
資料との巡り会いについても、山本氏は恵まれている。建仁寺両足院の資料の調査にも参加し、仁和寺の資料調査にも関わることができる研究者はほとんどいない。このような幸運な機会に巡り会うのも、研究者としての励みになっていることと思う。両足院本『杜詩抄』や仁和寺本『古文真宝抄』の調査など、抄物研究者に有用な成果であり、抄物研究の発展を促すものである。
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