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花と光の写真集『花に染む』
■自分流で野辺の花を撮り始めて以来、20年近くたちました。最初は東京で、最近はパリ、チロル、ザグレブなど、内外で個展を開いてきました。この写真集には、「独自の花の世界を創り出した」と評された59点を収めました。
■子育ても終わった頃「花の半島」(伊豆半島)を旅しました。四季を通じて、ツバキ、つわぶき、マグノリアなど深紅、黄金、純白の花々が咲き乱れていました。そこは花の楽園でした。野辺の花の華やぎに魅かれて、天城連山を望む山里に移り、野原、田畑、雑木林で花の写真を撮り始めました。
■独学でしたので、繰り返し繰り返し大きな壁にぶつかりました。はじめは、うまく撮ろうとする気持ちが邪魔しました。うわべだけの写真に満足し、花の個性に迫っていませんでした。何かが足りませんでした。やがて「考える軸」ができていないと気がつきました。「なぜ人は花を美しいと思うのか」。美の原点に立ち返って考えるため、長い間さまよい続けました。
■参考になったのは、生物学者レイチェル・カーソンの『センス・オブ・ワンダー』でした。子育ての頃に愛読したエッセイです。彼女は夜の岬で、遥かな星空や天の川を眺め、宇宙の美しさと神秘に触れたのでした。本書は繰り返し「自然への畏敬」を語っています。花も草も虫もそして人も、大いなる自然の鼓動の一つにすぎません。路傍の花にさえ、宇宙の神秘は宿っているのです。
■心境が深まるにつれ、私の撮影法も変わりました。それまで花は単なる写す対象でしたが、花との距離感がなくなりました。意識を集中し、深く長い呼吸をしていると時間が止まります。やがて「私が花を見る」のではなく、「花が私に語りかけてくる」不思議な感覚になります。花の世界に入り、花と一体になります。こうして今の私の撮影スタイルができました。
■なお、写真集のタイトルは、西行法師の歌にちなみました。出家してもなお桜花への想いを断ちきれなかった西行はこう詠みました。
花に染む 心のいかで 残りけん 捨て果ててきと 思ふわが身に
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