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◆第62回俳人協会賞受賞!
新装版にて再版しました!
「水泉動(しみずあたたかをふくむ)」。暦の中にこのことばを見つけたときなつかしくなった。新年が明けて大寒の少し前、寒さが最も厳しくなる頃の時候である。
私の生家は瀬戸内の石鎚山の登り口に近く、湧水を水源とする地にある。凍るような朝は蛇口を開け放って出し流した。水が温んでくるのを待って顔を洗うのだ。
七十二候を眺めるに多くがふとした気づきを誰かがつぶやいたようだ。なかでも玄冬の底に置かれたこの語の寧らかさにひかれる。いっそうの寒さがはじめて水の温みを気づかせる。(あとがきより)
◆作品紹介
雨太く楝の花に吹き込める
この夜を落葉の走る音ならむ
春風に背中ふくらみつつ行けり
烏瓜の花が黙つてついてくる
日の窓の一つかがやき初氷
末枯れて足あたたかに人の家
虎杖やひとり仕事の歌もなく
凍雲や生簀は声の散りやすく
靴下のちひさく乾く寒さかな
秋の水映画に長き掉尾あり
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