特集:リズムのメディウム
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リズムは、音楽と最も強い結びつきのある言葉だが、もとより音楽の専門用語ではない。たとえば、言葉のリズム、心臓の鼓動のリズム、生活のリズム、潮汐の干満のリズム、あるいはたてものの柱のリズミカルな配置など。さまざまな文脈での「リズム」という言葉は、しかし、単なる比喩的な表現ではないことは言うまでもない。大きな広がりをもつ「リズム」という概念の、それぞれの特徴を示す表現なのだ。
広義の「音楽のリズム」は、三つの下位概念、すなわち「拍」、「拍節」、狭義の「音楽のリズム」を含んでいる。音楽の構造という点から見ると、狭義の「音楽のリズム」は表層構造に属し、「拍」と「拍節」は基礎構造に属する。音楽を聴く時、実際に聴こえるのは表層のリズムである。「拍」や「拍節」は、表層のリズムの背後にある構造で、直接聴き取れるわけではない。表層のリズムにあっては、拍のさらに多様な分割から生じるさまざまな下位拍の組み合わせが複雑なパターンを形成する。音楽の表層的なリズムとは、何らかの仕方でアクセント付けられた(目立たせられた)表層拍とそうでない表層拍の組み合わせである。そして、ある拍が目立つかどうかには、その音の長さや強さだけではなく、高さ、音色などの多様な要素が同時に関与していて、一見単純な音の連なりのように聴こえる楽曲であっても、ひとたびリズムに焦点をあてれば、極めて複雑で多彩な音世界をつくり出していることがわかるのだ。
「響き合いの世界」の最終回は、この複雑で多彩な「リズム」について考察する。
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