(田中優子氏推薦)佐原には素晴らしい祭りと山車とお囃子がある。美しい川が流れている。見事な自治の歴史もある。わたしたちがそれを知っているのは、小森さんを中心にした町の人々がそれらを発掘し、形にし、川や道を美しく整え、日本国中に見せてくれたからだ、と知った。ここに、「まちおこし」のほんらいがある。経済(経世済民)のほんらいがある。それが本書ではっきり分かった。これからは日本じゅうがそれを学ばねばならない。
◆本書は、小森孝一という一人の人物のまちおこしの歴史を中心にまとめた本である。だが、一人の人物のヒーロー物語ではない。
小森孝一さんは今年八九歳になるが、自分が仕掛けたまちおこしの渦に中に、自身もワンオブゼムの一人として巻き込まれていく。この反転するダイナミズムに身をおくことで、今なお、まちおこしの第一線に立つ。そのエネルギーの根底には「このままでは佐原はだめになる」という切迫した危機感があった。
◆千葉県・佐原、利根川の舟運で栄えた商都。地図作りで有名な伊能忠敬が、地域指導者・地域経営の先覚者として生きたまちである。伊能忠敬の経世済民(世を治め、民を救う)を核とした地域経営の業績と思想は、佐原のまちが困難に陥ったとき、つねに立ち返って考えなければならない原点を照らしている。
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