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河南省南陽市新野県は、猿まわし発祥の地といわれ、中国で最も多くの猿まわし師が住む地域でもある。写真記者の著者は2001年に街で猿まわしの一座と出会い、それをきっかけに、彼らの生活を取材しはじめる。
猿まわし師たちは初夏の麦刈りと秋の収穫の時期を除き、1年のほとんどを猿を連れ、各地を渡り歩いて過ごす。痩せた土地に住む人々は、先祖代々、農閑期に猿まわしをして現金収入を得ることで生計を立ててきたのだ。
しかし、2002年に鮑湾村の猿まわし師・楊林貴の不法乗車による興行の旅に同行した著者は、“文明化”の名の下に社会から蔑まれ、排斥にあう彼らの厳しい境遇を目の当たりにする。経済発展に伴い都市部の治安・衛生管理が強化され、また文化的娯楽が多様化したことで、彼らは居場所を失いつつあった。特に近年、鞭やナイフを使い猿と諍いをする彼らの出し物は、虐待的だと非難されるようになっていた。しかし、猿まわし師たちは生活において何よりも猿を重んじ、一生にわたる縁を結んでいるのだった。著者は言う。
「中国は広大な国だ。地域間の貧富の差はいまだに大きく、私たちの誰もが、自分の住んでいる地域の暮らしをもって別の地域の人々の生活を理解することはできない。とりわけ貧困地域では、法律や倫理に反さない方法を見つけて生き延び、自活するということは非常に難しい。」
猿まわしで生きる最後の世代を20年にわたって追い、中国で社会的反響を呼んだノンフィクション。
カラー写真23点を含む、100点以上の写真を収録。
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