エキスパートに学ぶ肺癌診療 悩ましいシチュエーションへの解決策
肺癌の診断と治療はここ数年で飛躍的な進歩を遂げ、治療選択が複雑化してきている。ドライバー遺伝子変異とそれに対応する分子標的治療薬の発見は進行・再発非小細胞肺癌患者の予後を飛躍的に改善した。10年くらい前までは、EGFR遺伝子変異とALK融合遺伝子がドライバー遺伝子として検索されていたが、2022年の肺癌診療ガイドラインでは、8つの遺伝子異常がドライバー遺伝子として掲載されており、今後、その数がさらに増える可能性が高い。検索すべき遺伝子数の増加に伴い、遺伝子検査もsingle plexからmultiplexの検査へと移行し、また、multiplexの検査を施行するためには、十分な腫瘍検体の質と量が必要となってきている。
薬物治療においては、例えば、EGFR阻害薬も5つ上市されており、血管新生阻害薬とのcombinationや細胞傷害性抗がん剤との組み合わせも標準治療の一つとされている。このような中、どのレジメンを用いて治療を行うか、また、耐性化後の治療選択に悩むことも多い。また、近年、進行期においても、奏効すれば病勢を長期に制御することが期待される免疫チェックポイント阻害薬も数多く導入されている。臨床試験のデータを読み取り、各レジメンの特性を活かして、どのように最適なレジメンを選ぶかが現場の医師に求められている。
このように、様々な選択肢が増えてきている中、既存のエビデンスをどのように解釈し、意思決定をすべきか、また、エビデンスのない中でどのように最適な治療を選択すべきかは、本誌の主な読者対象である若手医師にとって切実な問題なのではと考える。そこで、肺癌の第一線で活躍する医師の思考を追体験することで、今後の読者の診療に役立てられることを目標に、本特集の企画を立ち上げた。
本特集では、上記のような問題点に加え、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬のre-challengeの考え方、最近実地臨床に導入され、今後さらに発展が期待される周術期治療の治療戦略について、そして、高齢者、PS不良、間質性肺炎、腎機能障害などの患者背景をどのように考慮すべきかについても第一線で活躍する医師に執筆をお願いした。加えて、病状説明の方法や医療経済的観点からの治療選択など、まさに、本特集の読者にとって、有益な情報を盛り込めたと信じている。本特集が、読者の肺癌診療の一助に役立つことを祈念している。
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