出版社よりお取り寄せ(通常3日~20日で出荷)
※20日以内での商品確保が難しい場合、キャンセルさせて頂きます
【序章より】(抜粋)
一九三三年一一月二〇日、反?抗日と民主政治の実現を標榜し、新たな国家体制を構想・提起した 政権が福建省において誕生した。福建人民革命政府がそれであり、その成立から崩壊までの過程は、一般に福建事変として知られるところである。本書が検討の対象とするのは、この福建人民革命政府(以下、人民政府と略称)についてである。
人民政府は、蔡廷?・?光?を指導者として福建に駐留し、省政を担っていた十九路軍を軍事的基盤として、陳銘枢や李済深ら国民党系の軍事的指導者、および第三党・神州国光社・国家主義派など、中国国民党と中国共産党のいずれにも属さない中間的勢力が結集することで成立した。すなわち、人民政府は、一九三〇年代前半の中国において?介石の指導のもと、統一政権として中央集権国家の建設を推進していた第一勢力たる国民党の南京国民政府と、それに対抗すべく存在した第二勢力としての中国共産党・紅軍による中華ソビエト共和国臨時中央政府という二大勢力の間に出現した、いわば第三勢力としての政権ということができる。
人民政府はその成立からわずか二ヶ月たらずの一九三四年一月中旬には消滅するが、それに参画した主要な人物・党派は一九三〇年代後半から四〇年代にわたる抗日民族統一戦線形成過程や抗日戦争期、さらには戦後中国における国共内戦期から中華人民共和国の成立前後の期間を通じ、第三勢力の一員としてその時々における政治や民衆運動の展開に関わりつづけることになる。また、人民政府はその成立過程において、中国共産党との間に反?抗日を共通項とした一定の提携を具体化させるという、注目すべき動向をも示した。
それゆえ、人民政府についての総合的な解明は、満洲事変以後の中国における抗日ナショナリズムの高揚と連動した一九三〇年代から四〇年代前半の中国政治史、第三勢力史、?介石・南京国民政府と中国共産党および第三勢力が織りなす統一戦線史、さらには戦後中国における国共内戦期や人民共和国成立期を歴史的に検討するうえで、決して看過することのできない重要な意味を有していると考えられる。本書が第三勢力としての人民政府(福建事変)を研究の対象としてとりあげる主たる理由は、そのような基本的問題意識と関心に基づいている。
よく利用するジャンルを設定できます。
「+」ボタンからジャンル(検索条件)を絞って検索してください。
表示の並び替えができます。