2021 年に34 歳で夭逝した写真家・下川晋平の作品集「Neon Calligraphy」をTCP PRESSから出版します(発売:ふげん社)。1989年長野県生まれの下川は、慶應義塾大学総合政策学部でイスラム文化を学んだ後、2011 年には東京綜合写真専門学校に入学、その後東京藝術大学院美術研究科先端芸術表現専攻で現代美術を学びました。イランの都市の商店のネオンサインにカメラを向けたシリーズで、生前の2020 年にニコンサロンで発表された作品。本書には写真評論家の飯沢耕太郎氏、木村伊兵衛賞写真作家の都築響一氏、作者の師であるイスラーム文化研究者の奥田敦氏のテキストを収録しています。
「「Neon Calligraphy」はイランにおけるネオンカリグラフィーを撮影したシリーズ。
イスラーム圏であるペルシアでは伝統的に書道文化が発展してきたが、現在ではその一端を町に灯るネオンにも見出すことができる。
ネオンの看板屋が並ぶ通りでは各店がその腕を競い合うように“書”を発光させている。イスラームにおいて書は「霊魂の幾何学」である、見えない神的生成の流れを筆を通じて「見えるもの」へと結晶化させたものであると言われる。
さらに、ある中世ペルシアのスーフィーによると“至高の筆”は光そのものであるという。
つまり眼によって知覚しうるもの全てが(神による)カリグラフィーということだ。
ここにおいて世界は神的な筆による“photo”「光」“graph”「描かれたもの」の不断の運動というヴィジョンが到来する。
闇夜を疾駆する光の筆の運動。それは闇を引き裂き、神的生成の光子を放電させる、速度であり、線分であり、痕跡の結晶なのである。」(作家ステートメントより)
◆イスラム世界では、書(カリグラフィ)は特別な意味を持っている。書家は神の言葉を可視化する「霊魂の幾何学」を実践する者として尊敬を集めているのだ。〓〓 飯沢耕太郎(写真評論家)
◆夜の闇にポツンと光る、流れるような文字のネオン。そのあかりの束のなかにたたずむ男たち女たち。その光の言葉は、なんだか神の走り書きのようにも見えてくるし、ぜんぜん僕には読めないのに、なんともいえない「情」が滲んでいるようでもある。〓〓都築響一(写真家)
◆ネオンカリグラフィー。それを観るべき「画」として捉えれば、アッラーの創造の偉大さが、そして、読むべき「書」として捉えれば、人間の弛まぬ日常と生命力が見えてくる。〓〓 奥田 敦(イスラーム文化研究家)
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