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思考は基本的には記憶を素材として、基礎として成り立っているとしていいであろう。しかし、デカルト以来、近代哲学は絶対的真理を求めるとして、記憶を排除してきたのである。記憶はあいまいで、忘却により無化し、絶対的真理を求めるうえで不必要、入ってはいけないものとされてきたのである。カントの先手的、先験的という概念も、経験からの記憶を取り除いたものとして存在しているのだ。
しかし、デカルトの絶対的真理の出発点とされる「我思う故に我あり」も「我思う」を記憶していて、はじめて成立しているはずである。日常生活においては、読者も、一字一句を記憶しながら進んでいるはずである。
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