近畿日本鉄道1960年代の写真記録

近畿日本鉄道1960年代の写真記録

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出版社
フォト・パブリッシング
著者名
西原博 , 牧野和人
価格
2,970円(本体2,700円+税)
発行年月
2023年1月
判型
B5
ISBN
9784802133753

近畿、中京地区で広範囲に亘り鉄道網を展開する近畿日本鉄道。その歴史は明治時代の末期に設立された大阪電気軌道に端を発し、同社を中心とした地域鉄道会社との合併で綴られてきた。また各路線の開業延伸時等には地域の状況に寄り添い、時代を先取りした安全で利用者が快適に乗車できる車両を次々と投入していった。
昭和30年代は黎明期から時の最新技術を盛り込んだ新鋭車両までを、現役の車両として同時に本線上で眺めることができる、愛好家にとって至福のひとときであった。名阪特急に充当された10100系「ビスタカー」と戦前派の元特急用車両2200系が並ぶ様子を、大阪線の起点上本町駅で日常的に見ることができた。さらに軽便鉄道の施設で存続していた地方支線等では、当時としても古典の範疇に入れられそうな、創業期の車両が定期運用に就いていた。
関東在住の著者は職務の合間を縫って近鉄沿線を訪れ、主要路線が変貌していく様子や新旧車両を撮影された。ある年には元旦から線路際へ出向かれた。寒気の中で撮影を続けた姿からは、鉄道に対する熱い想いを窺うことができる。また1964(昭和39)年に廃止された三重電気鉄道松阪線を廃止前日に訪れ、駅や沿線の様子を克明にフィルムへ焼き付けている。そこに写っているのは廃止を目前に控えているにも関わらず、普段と変わらぬ姿で仕業に就く電車の姿だ。昨今のように路線の廃止、車両の引退を華美なお祭り騒ぎにしていないところには、消えゆくものよりも次の新しい世界へ目を向けようとする高度経済成長期下の時代性を感じ取ることができる。同年には東海道新幹線が開業し、日本の鉄道時間地図は都市圏へ向かって急速に集束し始めていた時代であった。

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