女神誕生 処女母神の神話学

講談社学術文庫

女神誕生 処女母神の神話学

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出版社
講談社
著者名
松村一男
価格
1,353円(本体1,230円+税)
発行年月
2022年12月
判型
文庫
ISBN
9784065303283

太古の「大女神」、「大母神」から、処女であり母でもある「処女母神」へ――。普遍的な女神の変質は何を意味するのか。そして処女母神アマテラス、アテナ、マリアは、なぜ至高女神の地位を得たのか。時代も地域も異なる神話の共通点から、人類社会の原像を見出し、神話の新たな可能性を探る比較宗教学の試み!

スサノオとの宇気比によって生じた男神の母となったアマテラス、脚にかけられた精液を羊毛で拭き取り、それを捨てた大地から生まれた子の母となったアテナ、そして「主の言葉によって」母となったマリア。処女懐胎神話はほかにもギリシア神話のダナエや釈迦の母マーヤー、『マハーバーラタ』のクンティなど枚挙にいとまがない。しかし、それらの母の多くが、子の誕生時に亡くなるか、あるいはその後の場面から姿を消してしまうのに対し、至高女神として君臨するアマテラスをはじめ、アテナもマリアも、それぞれの宗教のなかで主導的立場を占めつづける。
時間的にも空間的にも異なる信仰にあって、なぜ、彼女たちは「処女にして母」という超越性とともに、それぞれの宗教のなかで燦然と輝く存在となったのか。
また、「処女母神」は、農耕や牧畜が始まった社会で生まれた新たな女神であり、それ以前には旧石器時代の石像に象徴される、自然の富の授与者としての「大女神」や「大母神」が広く存在していた。そんな「大女神」の系譜をひく処女女神アルテミスは、いかにして現代の優美な「ダイアナ」に変容していったのだろうか。
 比較神話学の手法によって、男性が生み出した神話の向こうに遠く浮かび上がる女性の姿を繊細にとらえ、単純な二項対立を超えた社会における男女の在り方を多彩な視点から描き出す、唯一無二の試み。
(原本:『女神の神話学――処女母神の誕生』平凡社(平凡社選書)、1999年)

序章 女神とは何か

第1部 「大母神」と「処女母神」
第一章 大母神から職能女神へ――旧石器時代の洞窟女神から考える
第二章 女性の神話学
第三章 処女母神の神(話)学

第2部 日本の女神と女性
第四章 女性のなかでただ一人――アマテラス神学生成の比較神話学的考察
第五章 なぜ「妹の力」だったのか

第3部 ギリシアの女神と女性
第六章 女神とポリス――アテナとアテナイ
第七章 アルテミスからダイアナへ――西洋における山野の女神像の変遷
第八章 女による暴力と女への暴力――ギリシア悲劇の暴力性と女性像
第九章 女たちを笑う男たち――ギリシア喜劇の女性像


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